Aug Week 3, 2024
It Was Not My Fault…
愛犬の死、罪の無い私だけが責められて…


秋山さま、ご意見を頂きたくてメールをしています。
結婚してまだ間もなかった昨年夏に、義父母が所有する別荘に義父母、義兄夫婦とその息子、夫と私が集まって1週間ほどを過ごす予定にしていました。 ですが、旅程を早めて帰宅する原因になったのが夫を含む義理家族が溺愛する愛犬が、炎天下の車の中で死んでしまったためで、 その責任追及の濡れ衣を着せられたのが私でした。
その日私は午前中に車の中に掃除機を掛けていて、後部座席も掃除をしましたが、その時には神に誓って犬が入り込むことなどありませんでした。 その後、昼食を終えてから夫と義兄と一緒に義兄の車で買い物に出掛け、義父母は別の場所に出掛け、義兄の妻(義姉)が当時確か2歳か3歳の息子と留守番をしていました。 そして全員が戻ったところで、愛犬が居ないという話になって必死で探したところ、私達の車の後部座席の下でグッタリしているのを見つけましたが、その時にはもう手遅れでした。
それで「何時犬が車内に入ったのか」、「誰が置き去りにしたのか」と言うことになり、「私が午前中に掃除機をかけたけれど、その時は犬は傍に居なかった」と説明しました。 ですが「それ以外に誰も車のドアを開けていないから、犬が車内に入り込んだのはその時しかありえない」と決めつけられてしまい、私が故意ではないものの、義実家の愛犬を不注意で死に追いやったと一方的に決めつけられてしまいました。 当時のことを思い出すと、未だに悔し涙が出て、どうして誰も信じてくれないのか、何故防犯カメラ映像のような決定的な証拠がある訳でもないのに、皆が私の責任だと決めてかかれるのかが全く分かりませんでした。
以来、暫しの間夫婦仲もギクシャクして、当時は離婚も考えました。でも時間の経過と共に夫は「わざとじゃないことは分かっているし‥・」という感じでなだめるようになって、 私も徐々に否定するのに疲れて、「知らない間に犬が入り込んでいたのかもしれない」とも思うようになっていました。

ところがつい最近、義姉とうちの車の話をしていた時、まるで運転したことがあるかのような話しぶりだったので、「うちの車、運転したありましたっけ?」と尋ねたところ、 昨年別荘で皆が出払っている間に、息子を連れて近所に買い物に行くのに車を使おうとしていたこと、それで後部座席の扉を開けて子供を乗せようとしたら何となく殺風景で、子供が居ない私達の車にはチャイルドシートが無いことを悟って諦めと話しました。「大人3人がチャイルドシートを乗せた車で出掛けるなんて、何かあって私が子供と出掛ける場合を考えたら配慮が足りないと思った」とも言っていました。 その時は普通に会話を終えたのですが、後から徐々に記憶が蘇って来て、 昨年別荘で義姉と甥を除く全員が出掛けたのは犬が死んだ日しかないこと、すなわち私が掃除をした後、義姉が車を使おうと後部座席の扉を開けていたことに気付きました。 何故義姉がそれを隠していたのか、私が皆から責められているのを見て怖くなったためか、ひょっとしたら犬を車内に放置したのが自分だという自覚が義姉にあったのではないかと疑い始め、 直ぐに夫に話しました。
しかし夫は「今さらそんな話を蒸し返しても…」という煮え切らない態度で、「私が掃除をした時に犬が入り込んだ場合でも、義姉が出掛けようとした時だった場合でも、どちらも故意で犬を殺した訳ではないのだから…」 と言います。でも私は絶対に犬を車に入れていない自信があるのに一方的に不注意だとか、「何てことをしてくれたのか」と責められ、義姉は車を使おうとして扉を開けたことを隠していたのに、疑われることも 責められることも無いのはおかしいと主張しました。そのことで夫とは言い合いになってしまいました。 一番ショックだったのは、夫が「愛犬を失った義家族の心の傷をこれ以上えぐらないで欲しい」と言って、強制的に罪悪感を与えられて 誰にも信じてもらえなかった私の心の傷のことは一切気にかけてくれない事でした。
収まりがつかなかった私は義父母、義兄にそれぞれ、犬が死んだ日に義姉が私の後に後部座席のドアを開けていたことを話しましたが、いずれも夫と同じリアクションで、 「もう済んでしまったこと」、「今更誰の過失かが分かったところで…」という言い分でした。 昨年夏のやりきれない思いが蘇って来ましたが、考えないようにしているうちに「まだあの時の悔しさにこだわっている自分の方が悪いのかもしれない」と思えるようにもなりました。

しかしその少し後に 義父母宅に用事を頼まれて出掛けた際に、義母に「あなたはちょっと不注意なところがあるから、犬の時みたいに…、だから気を付けて」と言われ、 何を言おうと、たとえ真実が明らかになったところで、愛犬の死はこの先ずっと私のせいにされると確信しました。 それを泣きながら夫に愚痴ったところ、「でも実際に死なせてしまったことは事実だし…」と、全く話が噛み合わないリアクションが返って来た時に夫への愛情が完全に冷めてしまいました。 今は離婚に向けて動いている最中で、どうしたら夫を含む義理家族に自分達が私に対して如何に失礼で、酷い態度を取って来たかを少しでも分からせたいと思っています。
実家の家族にだけは、義実家の犬の死の原因の濡れ衣を一方的に着せられたことは話しましたが、まさかこれで離婚をするとは思っていないように思います。 結婚して1年ちょっとですが、今なら私は未だやり直しが効く年齢だですし、仕事をしているので独身に戻っても大丈夫です。 むしろ年収では私の方が夫より稼いでいるので、こんな気持ちで結婚を続ける理由の方が無いと思ったのですが、先日相談した弁護士さんには「頭に血が上った状態で離婚を急いでいないか」と言われてしまいました。
それで秋山さんが私であれば、ここでどうされるかを知りたくてメールをしています。
私の了見が狭いとか、感情に任せて突っ走っているだけの場合はお叱りも受けますので、是非よろしくお願いします。

  ー F ー


事実を認めない心理の背景


頂いたメールを拝読した印象では、ご相談の件は私がここで何を申し上げても Fさんの中では既に離婚が決定事項であるものと感じています。 そして私がFさんであった場合も 同じように離婚に向けて動いていると思います。 理由はFさんのご夫婦間に一番大切な信頼が見出せないためです。
信頼は愛情、友情の土台になるもので、信頼していない相手との間に夫婦愛、家族愛、友情が生まれることはありません。 信頼不在の状態で夫婦や家族を続けることはストレスフルなだけでなく、やがて待ち受ける破綻への道のり以外の何者でもありません。
もし義実家の愛犬の死の問題が義姉さんと話される前の段階で終わっていれば、Fさんは離婚までは考えず、納得できないモヤモヤした感情を抱きながらも、 結婚生活を続けていたと思います。 ですが義姉さんがFさんよりも後に後部座席の扉を開けていたこと、しかもそれを隠していた疑いが浮上しても、 夫さん、及び義理家族が誰1人として Fさんを一方的に疑って責めたことについての謝罪や反省をしないというのは、Fさんを見下しているとも判断できる状況です。
もし夫さんがFさんを本当に信頼し、大切に思っていたら、まずはFさんが疑われた時点で Fさんの言い分を信じて庇うべきでしたし、 義姉さんの行動が明らかになった段階では、妻の名誉とプライドのために 夫さんが自分の家族にそのことを説明するはずで、謝罪については家族の判断に委ねたとしても、 Fさん1人が疑われるべきでは無かったことを家族内で明確にするべきなのです。

それを夫さんがしない理由、義理家族も取り合ってくれない理由としては、 愛犬の死が未だにショックで喪失感を味わっているという部分も多少はあるかもしれませんが、だとしても事実認定をするくらいの精神的余裕は当然持ち合わせているはずです。 あえて後から出て来た事実を認めたくないのは、夫さんを含む義理家族が 今さら自分達に非があったと認めたくなくない気持ちがあるため、 そしてFさんを有責と決めつける方が便利で、Fさんの罪悪感を利用して恩恵を受けてきたので、それを今さら覆したくない心理からだと思います。
別荘に集まった義理家族の中ではFさんが一番歳下であったかはさておき、確実に一番新しい義理家族のメンバーだったはずです。 義父母、義兄夫婦、Fさんご夫妻という3カップルは、一緒に別荘に出掛けるほど距離が近かったと思われますが、 家族や親戚でも大人が6人集まれば そこに上下関係、力関係が生じるのは言うまでもないことです。 Fさんはその中で一番下と見なされる罪を擦りつけ易い存在で、義理家族が気兼ねなく愛犬を失った失望や怒りの矛先が向けられる便利なターゲットだったのです。 同じ嫁でも 義姉さんは長男の妻ですし、既に跡継ぎを産んでいるので、義父母との関係がどうあれ、Fさんより上の格付けのはずです。
Fさんは犬の事件以降、自分の責任だとは思わなくても罪悪感を感じて、義理家族に気を遣いながら 常に下手に出て、 何とか自分を見直してもらうと努力されていらしたのではないでしょうか。 Fさんはお仕事をしていらっしゃるのに「義父母宅に用事を頼まれて出掛ける」というのは、就業時間後、もしくは週末に出向いて入らっしゃる訳で、 ひょっとしたら夫さんからも「両親や兄から”自分の否を認めない嫁”と思われないように 暫くは大人しく言う事を聞いて欲しい」というような釘を刺されたかもしれません。 その結果、Fさんは犬の事件以来、居心地の悪い思いをしながら 義理家族孝行に努めていらしたように見受けられます。

夫さんにしても「わざとじゃないことは分かっているし‥・」とおっしゃって態度を軟化されたとのことですが、これはFさんを庇っているように見せかけながら Fさんの有責を決めつけて、 「許してやる」的な斜め上からの言い分に過ぎません。 そんな言い分を受け入れていれば「絶対に掃除の際には犬が車に入っていない」という確信を持っていたFさんが 「知らない間に犬が入り込んでいたのかもしれない」と思うようになっても不思議ではありませんが、 それは立派な洗脳なのです。 Fさんに罪悪感を植え付けることで、夫さんは年収で自分より稼ぐ妻に対して”イニシアティブを握った”、もっと日本風に言えば”マウントを取った”お気持ちでいらしたと思います。 恐らく夫さんのFさんへの態度も、犬の事件があってからの方が自分の優位を示すものになっていたものと推測します。
夫さんも、義理家族も、Fさんが有責である方が自分達にとって都合が良い訳ですから、義姉さんの話にまともに取り合って、自分達が謝罪や反省を強いられる立場になる筈がありません。 それが出来る人達であれば、最初からFさんに対して確証が無い状態で罪を擦りつけるようなことはしなかったはずなのです。

勝手な思い込みの鋳型にはめられるより…

アメリカでは、殺人事件で有罪になった容疑者が、長きに渡って冤罪を訴え、確実に有罪判決を覆す証拠や証人を揃えたことで控訴が認められると、 必ずと言ってよいほど 無実の人間に罪を擦りつけた検察側と一緒になって控訴審に猛反対するのが被害者家族です。 私はそうした様子を見る度に、家族の死について真実を知りたいという気持ちよりも、「自分が犯人だと信じて、恨んで、公に罵倒してきた人間に犯人で居て欲しい」と思う心理が強いことに驚きますが、 一度その心理に陥ると、最初の裁判の際に検察側が容疑者を不利にするために隠蔽していた証拠や証言を提示されても、真実が受け入れられないケースが殆どです。 その背景には、検察側が「容疑者が犯人で間違いない」という決めつけで被害者家族を洗脳し続けて来たこともありますが、 控訴で有罪判決が覆されれば、再び犯人捜査がふり出しに戻り、「誰に怒りをぶつけたら良いかが分からない日々が戻って来る」 「さまざまな感情に終止符が打てない状況がこの先も続く」ことを恐れている、もしくは嫌悪している遺族が非常に多いと言われます。

人間は自分にとって都合の良い解釈をしたがる生き物ですし、記憶を自分に有利に書き換えることも珍しくありません。 そして質が悪い人間ほど それを「自分がついた嘘や、自分に都合が良い解釈を 事実として書き換える」という形で行っています。
私の目からは、Fさんの夫家族はその類の人達である可能性が高いと思います。
そんな人達と一緒に居れば、争いを避けるために聞き流した不本意なことが事実認定されてしまい、それを事ある毎に刷り込まれて、 Fさんの人間性が歪んでしまいます。義母さんが犬の件でFさんが有責ではない可能性を知りながら、 「あなたはちょっと不注意なところがあるから気を付けて」とおっしゃったことにFさんは腹を立てていらっしゃいましたが。 こうしたタイプの人たちは、自分に都合が良いように相手の人格を決めつけて、その勝手な思い込みの鋳型にはめてしまうのです。 育児においても 親による「悪い子認定」で性格が捻じ曲げられてしまうケースがありますが、もし義兄さんが夫さんよりも義父母に優遇されているようなことがあれば、 夫さん自身が成長過程で一家の悪役を押し付けられて、演じていたかもしれません。
そうした育ち方をした場合、そんな虐め体質のパワー・ダイナミックスが家族の在り方だと思いこんでいるケースは珍しくありませんので、 犬の事件以来、家族の中でFさんの立場が弱くなったことをごく自然に受け止めていたかもしれません。 そしてそれがFさんが加わった家族における新しい力関係だと認識していたのかもしれません。
義姉さんにしても、そんな義理家族の中で立場が弱くなるのを恐れてFさん1人が罪を被るように仕向けたのかもしれませんが、 お陰でFさんはそんなトキシックな結婚や義理家族に見切りをつける決心が出来たのですから結果オーライということなのだと思います。
一見まともに見える相手やその家族でも、関わってみると闇深いものを抱えているケースは少なくありませんし、そうした本性は何か事が起こるまで分からなくても不思議ではありません。 その何かが起こった時に、辛抱強さを美徳として自分に無益な我慢を強いていたら、人はどんどん不幸になって行くだけです。 そこで自分を幸福に導くための決断力と行動力を発動したFさんは強い女性だと思いますし、その選択を後悔することは無いと思います。
Fさんがこれまで味わって来た ご自身の言い分を信じてもらえないフラストレーション、押し付けられる罪悪感から解き放たれるだけでも、精神的に大きな 幸福感と穏やかで自由な安定感が味わえるはずです。それは健康面でもポジティブ効果として現れるはずですので、 それを弾みにして今後の波に乗って頂きたいと思います。
そして最後に、もし弁護士が Fさんの意を汲んだ法的代理人になれないと判断される場合は別を当たる方が賢明です。 見切りをつける場合、弁護士は 夫よりも素早く決断するべき存在です。

Yoko Akiyama



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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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