Feb. Week 1, 2024
Reasons Why I Stopped Getting Botox Injections
私がボトックスを止めた理由


CUBE New Yorkさんの初期からの読者です。私はアメリカに留学し、その後アメリカ人男性と結婚して以来、ウェストコースト在住です。
今回ご相談したいのは、友人にしつこい程ボトックス注射を勧められていることについてです。 その女性は60代で、年齢より若作りしていますが、いかにもカリフォルニア的な日焼けのダメージをレーザーやボトックスでごまかそうとしているタイプで、 本音を言えば ナチュラルさの無い、ちょっと怖いルックスです。 髪の毛も以前からエクステンションをつけていて、ボリュームだけは めっぽうあるのですが、地毛が傷んでいるのが分かります。 亡くなったハズバンドの遺産がタップリあるらしく、しかも本人はまだまだ男性を見つける気満々なので、美容にはすごくお金を掛けています。

私はと言えば、ずっと子育てと仕事に追われ、休みの日は夫婦共々アウトドア派で、メークやスキンケアは最低限のナチュラル派です。 でも50歳を過ぎて シワが深刻になってきたのは自分でも実感していて、問題の友人は「自分が払うからボトックスを受けて」とまで言って来るので、 「そんなに酷いシワなのかな?」と思ったりもしています。
友人には 20代の娘さんが2人居て、その娘さん達も既にボトックス注射をしているそうで、今の若い子たちは20代でボトックスをするのは珍しくないようです。 でもつい最近の写真を観たら、ティーンエイジャーの頃は、絵にかいたようなブロンドの美人チアリーダーという印象だった娘さん達が、ちょっとケバくなったというか、 若いのにキツい印象の老け顔になっていたのをとても残念に思いました。

それで秋山さんが以前のコラムで「ボトックスを打つのを止めた」と書いていらしたのを思い出しました。 でも秋山さんがどういう理由でボトックスを打つのをお止めになったのかを忘れてしまいまして、それが非常に気になっています。 現時点ではボトックス注射をする気はないのですが、周囲にはボトックス注射をしている人が凄く多く、「安全だから」と勧める人は居ても、 ボトックスを止めた人には見事にお目に掛かりません。 出来れば、秋山さんがストップした理由や、リスクや問題があるようでしたらそれについても、ボトックス経験者の立場から教えて頂けないでしょうか。
勝手なお願いですが、よろしくお願いいたします。

- N -


ボトックスを打ち続けると…、私が見た実例


私が最初にボトックス注射を受けた時は43歳だったと記憶しています。
最初の2年ほどは シワが全く無くなるのが嬉しくて、4ヵ月に1回ペースでボトックスを打っていました。ですがある時の施術中に、注射針が頭蓋骨をまで達したような痛みを覚え、 その後3日間、めまいでフラフラになる経験をしました。調べるとめまいはボトックスの副作用の1つでしたが、この時の歩けないようなめまいは明らかにドクターのミスだったと思っています。 その経験で「ボトックスはやはり毒の一種」であると再認識してからは、春分の日と秋分の日の前後を目途に年に2回のペースにしました。 私はいかにも「ボトックスを打ちました」という印象の不自然にピンと張った肌や、額や眉が動かない状態に抵抗があったので、そのペースで丁度良いと思って続けていました。 施術を続けている間は 「ボトックスほど 誰にでも確実にシワ改善効果をもたらす施術は他に無い」と考えていましたし、ボトックス普及に伴って 料金がどんどん下がってきたのを歓迎していて、 安全性については疑いを持っていませんでした。

その私がボトックスを止めるきっかけになったのは、ボトックスを打っていた部分の皮膚が明らかに薄くなってきたこと。 加えてボトックス注射を打っている多くの男女が証言する通り、ヘアライン(毛の生え際)が上がってきたのも感じていました。
そこで「果たして何歳まで、期間にして何年程度ならボトックスが安全に続けられるのか」をリサーチしましたが、その結果「止めた方が良い」のではなく、「手遅れになる前に止めなければ」という気持ちになりました。 実際にボトックス注射をしている医師からも話を聞いて、その医師に勧められた著名美容整形医が書いた本も読んでみましたが、 調べれば、調べるほど ボトックスやフィラー、レーザー、HIFUなどの美容施術全般について かなり考えさせられることになりました。

まずボトックスについては、アメリカで最も施術回数が多いドル箱ビジネスとあって、昨今YouTubeに登場する美容整形医の中にはボトックスの年齢リミットを80~85歳とまで言うドクターも居ます。 ですが まともなドクターに安全と認識されているのは65歳前後で、実は私のアメリカ人の知人が65歳を過ぎてもボトックスを打ち続けていました。 彼女も私同様、ボトックス注射を始めたのは40歳を迎えてからで、以来3ヵ月置きの年4回ペースで注入を続けていたようです。 彼女は自他共に認めるビューティー&ヘルス・コンシャスで、ヨガやエクササイズでスリムなボディを保ち、野菜中心の食生活をしながら、きちんとサプリを摂取し、マッサージやフェイシャルに通い、 高額スキンケアを愛用するなど、若さを維持するお手本と言えるようなライフスタイルでした。
それでも65歳を過ぎた頃から、長年の施術で薄くなった肌の一部が ボトックスに反応しなくなってきたことから、 フィラーを併用するようになりました。すると それまで 頭蓋骨にぴったり張りつくような薄さで、テカテカ光っていた額の皮膚に厚みが加わり、一時はナチュラルになった印象を受けました。 ですが、次に会った時には顔全体が浮腫んだように膨らんで、何とも言えない不自然な顔になり、その次に会った時には パンパンのボリュームは改善されましたが、シワも生気もない人工的な老け顔になっていて、その僅か1~2年の変貌には驚くばかりでした。
世の中では美容整形に夢中になる恐ろしさは、最も美しい段階でストップが掛けられずに、どんどん高望みをして、逆に容姿を悪化させることだと思われていますが、 実際にはどんなに安全と言われる施術でも続ければ、続けるほど、時間の経過に伴って様々な問題が生じる訳で、 特にエイジングで衰えた肌や筋肉の場合、「施術→問題→修復」のサイクルはエンドレスです。 このプロセスによって、見た目が不自然になるのはもちろん、肌、筋肉、骨、細胞等にダメージを与え続けるので、 一時的な見た目の若さを美容施術に求めることは、長期的な目線で見れば老化を早めていることに他ならないのです。

最終的に辿り着く解決法は…

私が顔のエイジングやボトックスの影響についてのリサーチを通じて悟ったことの1つは、老化の本質を理解する必要性でした。 30代、40代の頃は、誰もが顔の老化現象と言えば 額、目の周りや眉間のシワ、そして日焼けのダメージを含むシミや色素沈着だと考えています。 それが50代以降になると、顎や首を含む顔の下半分の皮膚のたるみ、特に口の周りのほうれい線やマリオネット・ラインが深刻な問題だと考えがちです。 言うまでもなく老化は生きている間中 進行し続けるものですが、理解しているようでも分かっていないのが 40代でも、60代でも老化現象の根本原因が同じだということです。
上の4つのグラフは、老化の指針となるコラーゲン・レベル、骨質量、筋肉量と筋力、そして基礎代謝率の加齢に伴う推移を表したものです。 見ての通り 加齢に伴って 体内ではコラーゲン、骨、筋肉の生成と代謝力が落ちて行くだけでなく、その速度がどんどん速まって行く訳ですが、 これらは それぞれに独立した症状ではありません。コラーゲン・レベルが下がれば、筋肉が衰え、筋肉が衰えると代謝力が衰え、 そうなるとカルシウム、ビタミン D等の骨を構成する栄養素がブロックされて骨量減少や骨の脆弱化や変形を招く といった形で連動しています。 顔に老化の初期症状として現れた目の周りの小じわ、やがて生じる頬や顎の皮膚のたるみ、その後に生じる深いしわや 失われる弾力と張りといった問題は、 年齢に応じたコラーゲン・レベル、骨、筋肉、代謝力の低下が顔に表れた症状であり、同じような老化の症状は全身で起こっています。


上のビジュアルは顔にフォーカスして 骨、筋肉、皮下脂肪、皮膚の老化による衰えを示したものですが、これを見て分かる通り、 若さを保つということは コラーゲン・レベル、骨、筋肉、代謝力の衰えを防いで、出来る限りハイレベルに保つということ。 加えてブラウン・ファットと呼ばれる必要な皮下脂肪を保つことです。
そう考えると、顔の筋肉を麻痺させ、長期使用で退化させるだけでなく、顔のブラウン・ファットを減少させるボトックスは、一時的にシワを消したとしても老化を早める美容施術です。 また近年ではボトックスの長期使用が骨の減少を助長することが指摘されるようになってきています。
フィラーにしても、注入の数ヵ月後、1年後に効き目と共にフィラーが消えてなくなると認識されていますが、実際には肌の組織内の残留物が残ることが指摘されています。 これはどんなに高額なフィラーを注入しても起こる症状で、年齢を重ねて代謝力が衰えた状態でこの残留物が身体にどう影響するかは未知数で、昨今では発がん性も指摘されるようになりました。 アメリカで食品医薬品局がフィラーの使用を承認したのは1981年のことですが、美容施術として一般に普及し始めたのは2000年以降です。 ボトックスにしても、コスメティック用途をFDAが認可したのは2002年のこと。それ以前にも別の医療用途で認可されたボトックスをシワ改善のために注入する傾向はありましたが、ボトックスもフィラーも 30年、40年という長期スパンで使用した場合の安全性を立証する実例は 未だこの世に存在していないことは認識しておくべきだと思います。
さらにレーザー施術にしても、1年程度肌を若返らせるために、肌の寿命を2年縮めているケースが多く、 基本的に美容施術というものは、ボトックスからフェイスリフトまで、その時々の若返りや、コンプレックス解消を提供するインスタント療法です。 施術を行う側のドクターも、その時々のシワやシミを消したり、顔立ちを美しく変えることは仕事だと思っていても、患者の「健康的な長生き」や「10年後、20年後のルックス」等は一切考慮していないのが実情です。

ところでボトックスを止めると どうなるかと言えば、肌の筋肉の麻痺が収まるに連れて 皮膚が筋肉と一緒に動き始めるので、小じわが目立ち始めるのは当然の宿命です。 「シワが無いと思っていたのはボトックスのお陰だった」ことを実感する一方で、肌に自然なボリュームが戻り始めるので、日によって肌の印象が異なりますし、寝不足や疲れ、アルコールが肌に与える影響を より顕著に感じるようになります。 時に、老化が情けなくてボトックス注射に戻る誘惑にかられたこともありましたが、 我慢を続けているうちにシワに対する考え方が徐々に変わって行きました。
20代の女性でも笑えばスマイルライン(笑いジワ)が出来る訳で、それが瞬時に元に戻るのが若い肌。 また個人的に印象的だったのは、ボトックスを片頭痛や多汗症等、美容以外の医療用途でも打っている医師が、「医療目的で打つ患者の方が、美容施術でボトックスを打つ患者より、笑いジワがある分幸せそうに見える」と語っていたこと。 そう考えながら いろいろな人々の笑顔を観察するうちに、シワがあっても顔全体で幸せを表現する笑顔の方が 観ていてい気持ちが良いだけでなく、遥かにチャーミングであることを実感しました。 また笑いジワに関しては 自分が幸せに生きて来た軌跡だと捉えられるようになって、”シワの無い顔” よりも ”何歳になっても 表情が活き活きした顔”、 ”幸せそうで魅力のある顔” になりたいと考えるようになりました。


Nさんも書いていらしたように、今では20代でボトックスやフィラーを打つ女性が増えているようです。 美容整形医やスキンケア・スペシャリストによれば、今の20代は以前の20代よりシワやシミが早く出ているとのことです。
ですが20代から美容施術を始めた女性は ルックス・コンプレックスが乗り越えられない精神的弱さのせいか、後にうつ病など精神面の問題を抱えるケースが多いことがレポートされています。
写真上はビリー・アイリッシュ(左、22歳)やゼンダイア(中央、25歳)、カイリー・ジェナー(右、26歳)ですが、彼女らは「20代にして40代に見える」と言われているので、 お金に糸目をつけずに美容施術が出来ることがプラスになる訳ではありません。
結局のところ、顔を含む全身の若さを保ちながら、健康に長生きする手段は、健康的な食生活、十分な睡眠、エクササイズ、 肌質に応じたスキンケア、適切なサプリメントによる栄養補給、そして飲酒・喫煙をしないクリーンなライフスタイルを地道に続けるしかない訳で、 顔だけ一時的に若返ったように見せたところで、後で大きなツケを支払うことになってしまうのだと思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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