秋山 曜子様、
CUBE New Yorkさんのサイトの大ファンで、特に読んでいるうちに希望が湧いて来るこのコーナーが大好きです。
そんな秋山さんの励ましの後押しを頂戴したくてメールをしています。
私にはある目標のために勉強したいことがあり、そのためにかなり頑張って貯金をしてきました。
ようやく十分なお金が貯まったと思ったら急激な円安、景気の先行きが暗くなってしまい(それまでも明るいと思ったことはありませんでしたが)、
周囲のムードが慎重になってきて 「こんな時に大金を払って勉強なんかするよりも、貯めたお金を今後の生活のために取っておいた方が良いのでは?」と
友達に言われたのがきっかけで「本当にそうなのかもしれない」と思うようになってしまいました。
私の家族も友人も、相談した人は全て「どうしても遣りたいのなら止めないけれど、自分だったら先のことは分からないから、貯めたお金をこの先のためにとっておく」
という慎重論が圧倒的です。
私には他の積み立てもあるので、貯めたお金を勉強に使っても 当座は大丈夫ですし、仕事も安定しています。
目標にしていることは自分の夢であり、そのための勉強は悔いの無い人生のために必要なステップだと考え続けてきました。
私は30代半ばで、独身。付き合っている相手など居ませんし、結婚願望も無く、若さとチャレンジ精神があるうちに頑張ってみたい気持から貯金をしてきました。
ですから目標のための勉強は必ずするつもりですが、「何も今やらなくても…」という気持ちに押さえつけられてしまっています。
私は本来意志が強い方ではありません。貯金を続けることくらいは問題ありませんが、いざ踏み出すことが出来ない性格です。
ここで目標を先送りにしたら 気付いた時には40歳、50歳と歳を取って一生目標が達成出来ないような気がしています。
今までのこのコーナーを読んできて、秋山さんだったらきっとチャレンジするようにと薦めて下さると思ったのでこのメールをしています。
もし薦めて下さるのであれば、私が目標のために踏み切っても 後悔しない決断の仕方をアドバイスして頂けないでしょうか。
秋山さんでしたら もうお分かりだと思いますが、私は不安はあるものの 当初の予定通り勉強に取り組みたい気持ちで一杯です。
でもそれが上手く行かなかった時に自己嫌悪に陥りたくないので、「たとえ決断が間違いでも後悔しない」という気持ちにならないと、
勉強に取り組んでいる最中に不安になってしまうと思います。
他人任せで恥ずかしいとは思いますが、自分1人で考えていると 夢と不安が交互に襲って来る堂々巡りです。
「もう迷わない!」という腹をくくった決断をして目標に取り組むには、今の状況をどう割り切るべきでしょうか。
是非アドバイスをよろしくお願いします。
- R -
Rさんがお察しの通り、私はRさんに景気の先行きを恐れず 目標に向けた勉強にチャレンジすることをお薦めする立場です。
その理由は以下の通りです。
ここで目標を先送りにすると、何でも先送りにする習慣がついてしまいます
世の中の成功者には決断力と実行力があると言われますが、実際には成功者は「遣るべき事は遣る」と決めているので
実行のプロセスに決断が関与していないケースが多いのです。
そして成功者ほど「遣るべき事は早く済ませる方が利点が多い」ことを理解しているので 「物事を先送りにしない」、「今日出来ることは
今日のうちにやっておく」という考えを持っています。
世の中には良いアイデアやプランを持っていても実行や具現化に取り組まない人、取り組めない人は沢山います。そうした人達が
往々にして陥るのが「先送り」というトラップです。
「先送り」は「用心深さ」、「好機を見極める時間」として美化されがちですが、
実際には決断を下す必要も無く、実行に移す必要も無い楽な選択です。
そして一度物事を先送りする習慣をつけてしまうと、人間は人生の中でそれをオールマイティに使うようになります。
パンデミック以降、断捨離をした人は沢山いますが、家の中に何故特に必要が無い物が溜まってしまうかと言えば、
捨てる、手放す決断を先送りにしたためです。
ですから断捨離ブームに乗せられて 家の中が片付いたところで、「先送り」の習慣がある限りは 人生は一向に展開することはありません。
人生に取り組むこと、夢や目標に向かって踏み出すことは物を捨てるよりもずっと勇気と決断力を要することなのです。
ここでRさんが長く目標にしてきたことを先送りにしたら、これからの人生でも先送りの習慣がついて、いつもチャンスを目の前に踏み止まるようになってしまいます。
逆にここで目標に取り組むことが出来れば、この先の人生でも必要なチャレンジに自分を奮い立たせる決断が出来るようになります。
その実例を作るためにも、私は先送りせずチャレンジすることをお薦めします。
目標達成のための貯金を今後の生活のために取っておくと、本当に今後の生活費に消えてしまいます
お金というのは生き物であり、人間の考えや性格を察知してその通りに反応するものです。
だからこそ お金に苦手意識がある人にはお金は寄り付きませんし、お金を大切にしない人からはすぐに出て行こうとします。
逆に活きた遣い方が出来る人のところには お金は仲間を連れて戻ってきます。
生活のために働いている人のお金は 生活のために消えていきますし、同じ積み立て貯金でも「何かあった時は、これを解約しよう」という気持ちで積み立てれば、
やがて解約して使い込む結果になるものです。
Rさんが目標達成のために頑張って貯めたお金は、その用途通りに使えば目標達成に力を貸してくれるはずのお金です。
そして頑張って貯めたお金を使った勉強だからこそ Rさんも真剣に取り組めるはずなのです。
ですがそれを「今後の生活に備えた貯金」に格下げしてしまえば、お金もその通りの振舞いをするようになります。
Rさんは、「目標達成の勉強は必ずするつもりですが、今やらなくても…」という気持ちで悩んでいらっしゃるとのことでしたが、
その気持ちになったのは「こんな時に目標実現の勉強なんてするよりも、貯めたお金を今後の生活のために取っておいた方が良いのでは?」とお友達に忠告されたためでした。
すなわちご自身に自覚があるか無いかは別として、せっかく目標実現のためにしてきた貯金を今後の生活の備えにしようと考えていらっしゃるのです。
そんな考えで目標を先送りにすれば、やがてRさんはその貯金を「先が見えない時代の経済的ゆとり」と捉えるようになります。
そしてこれまでのように夢や目標を追いかけていない空虚さを埋めるために、以前だったら断っていた友達の誘いに乗って食事や旅行に出掛けては、刹那的な幸福感を味わうようになってしまいます。
そういうお金の遣い方を始めると 金銭的な見栄を張らないと付き合えない友達や、結婚願望が無かったRさんでも自腹を切ってデートしたいと思える年下のボーイフレンドなどを
引き寄せてしまうので、あっという間に貯金は消えてしまいます。
お金にコントロールされるのではなく、お金をコントロールする人生を送りたいのであれば 自分が決めた通りにお金を使うべきです。
状況に流されるべきではありません。
最もハイリターンな投資は自分への投資です
フォード・モーターズの創設者、ヘンリー・フォードの語録に「人生の保証はお金に求められない。身に着いた知識、経験、能力こそが人生を保証する」
というものがありますが、インフレが進んでお金の価値がどんどん下がり、株やクリプトカレンシーに投資しても暫しの間はろくなリターンが見込めない今、
自分に投資をするのは決して悪いファイナンシャル・デシジョンではないと私は考えます。
もしRさんの勉強が外国絡みであるなど、その費用に円安が影響する場合、先送りをして待っている間に
費用が割高になるかもしれませんし、インフレがそれに拍車を掛けることも見込まれます。
人間はある程度年齢を重ねると誰もが 「もっと勉強しておけば良かった」と後悔するものですが、
逆に「勉強なんてしなければ良かった」と後悔する人はまず居ません。
学びが人間にマイナスに働くケースなど無いのです。
どんな時代になるか分からない今だからこそ、どんな時代でも生きて行ける強さや、生き残れる能力を身につけることは
最善のお金の遣い道だと思います。
目標に取り組んでいなと希望がなくなり、余計な人、物、事に惑わされる人生になります
人間は本能的に向上心を持っています。そのため何かに向かって前進しているという意識は、人間の幸福感の大きな要因となります。
Rさんが貯金を頑張って来られたのは そんな前向きな気持ちからだったと思いますし、将来の夢を頭に描いて勉強の準備やリサーチをされるのはとても楽しいことだったと思います。
ですが「先送り」と称して、目標から一時的にでも気持ちが離れると、人生の余計な事に時間とエネルギーを取られるようになって行きます。
人間の心理は視力と同じで、一つの目標に焦点を絞っている時は、他のものが ぼやけて見えるので どうでも良い事に関心を注いだり、ストレスを感じることはありません。
ですが一度 視点のフォーカスが緩むと、余計な物がどんどん視野に入ってくるので、
他人の行動や言動が気になったり、何の役にも立たないことに夢中になるなどして、価値観が変わってしまうことも少なくありません。
もちろん人生には目標へのフォーカスを一休みして、文字通り視野を広げることが大切な時もありますが、
それは必要なことを学んで、再び目標に狙いを定める意志があるからこそ意味を成すものです。
Rさんはせっかくこれまで目標を見据えて しっかり生きて来たのですから、ここでそれを先送りにしてフォーカスを失う必要はありません。
自分の人生を決めるのは自分です。景気動向ではありません。
アメリカは現在住宅ローン金利が5.78%となり、過去22年で最高レベルです。ですから現在のアメリカはよほどの好物件に巡り逢わない限りは
不動産を買う時期ではありません。景気動向はそうした形で人生の決断の判断材料になるべきではありますが、「景気の先行きが不安だから」という理由で
目標の実現に向けた勉強を先送りにするのは間違っています。そもそも個人の運や人生は 景気と一緒に低迷する訳ではありません。
ビジネスにしてもUber、Venmo、インスタグラム、エアbnb、スナップチャット、およびクリプトカレンシー、ブロックチェーンは、前回のファイナンシャル・クライシス(日本で言うリーマン・ショック)の
2008~2009年にスタート、もしくは立ち上げ準備が行われていた訳ですから、景気が芳しくない時代の方が
次世代を担うビジネスやテクノロジーが生まれ、実力の無いビジネスが淘汰され、時代が変わっていく時なのです。
個人レベルでも不況の時代の波に乗る人も居ますし、その時期の勉強や努力、投資が次の好況期のサクセスに繋がるものなのです。
景気が停滞して世の中が後ろ向きになっている時ほど 前向きに生きている人との格差は広がりますので、
そういう時ほど目標を貫くべきなのです。
諦めさえしなければ、目標や夢への取り組みに失敗はありません
Rさんはメールに「上手く行かなかった時に自己嫌悪に陥りたくないので、”たとえ決断が間違いでも後悔しない”という気持ちにならないと」と書いて下さったのですが、
目標や夢への取り組みは 途中で諦めさえしなければ、一時的に上手く行かない時があっても それは「成功の過程の試練」であって、失敗ではありません。
人生には上手く行かないことや間違いは付き物ですから、どんな時期に何を始めたとしても問題が起こりますし、辛い時期もやってきます。
そんな時には後悔したり、落ち込むこともあると思いますが、それを乗り越えて頑張った先にあるのが成果や成功です。
トラブルに見舞われた時こそ 気持ちを強く持って、そこから何を学んで何処へ進むべきかを考えるべきなのです。
そうした試練は 覚悟や備えの気持ちがあるからこそ乗り越えられるもので、最初から「全てが上手く行くはず」などと浮かれていたら 直ぐに潰されてしまいます。
その意味では好況時に楽観的に物事を始めるよりも、慎重にならざるを得ない時代に、辛さを覚悟して目標に取り組む方が好結果を生む可能性が高いと私は考えます。
この世に生を受けた限りは 失敗や間違いを恐れて何もしない、何にも取り組まない事の方が人生の失敗であり間違いだと考えるべきです。
私はカルマというものを信じていて、自分のしたことは良い事でも 悪い事でも必ず自分に返ってくるという考えを持っていますが、
何もしない人に起こるのは 良い事も、悪い事も 何も起こらないカルマです。
事なかれ主義の人でしたら「それでも構わない」と考えるかもしれませんが、実際には
同じ事を繰り返す変化の無い退屈な生活は、ただ死ぬのを待っているような単調さで 決して楽なものではありません。
そういう人生を送っていると、刺激やモチベーションが無いので 頭も身体も鈍くなって 老化がスピードアップしますし、
楽しさや苦労を味わう人生と違って決してターニング・ポイントが訪れることもありません。訪れたとしても取り組み方が分からないまま 逃してしまいます。
人間は生きている限りは心電図モニターのように、アップダウンがあるべきなのです。
そのアップダウンの中にこそ 成長や成功、幸福があると思って下さい。
最後に、「もう迷わない!」という腹をくくった決断をして目標に取り組むために 私が個人的にお薦めするのは、
「一度始めたことは目標まで遣り抜く」と決めて、日頃からそれを実践することです。
苦しい状況に見舞われた際に、往々にしてパフォーマンス力を低下させるのが 「止めようか、どうしようか」という迷いです。
精神的に余裕が無い時には そんな迷いがかなりのストレスになるのです。
でも「途中で止める」という選択を排除すると、「どうやったら上手く遣り遂げられるか?」だけを考えられるようになります。
人間にとって選択はエネルギーを消耗するタスクであり、弱い人間ほどネガティブ心理に強く引きこまれるので、
「自分は強い人間でない」と自覚する人ほど 最初から遣り抜くという方向性を決めてしまった方が 精神面で遥かに楽になります。
人間は習慣性の生き物なので、日常生活の些細なことでも「一度始めたことは目標まで遣り抜く」と決めて 実践を積み重ねると、
それが自分の生き方になって行きます。
Rさんには 目標のための勉強を 先送りせず、迷わず、失敗を恐れず、是非やり遂げて頂きたいと思います。応援しています。
Yoko Akiyama
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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