秋山曜子様、
いつもサイトの更新を楽しみにしています。日本で報じられないアメリカのことなど、とても勉強になり、ビジネスのアイデアも頂いております。ありがとうございます。
私にもご相談させて下さい。
少し前に知り合いから「ある女性を私が経営する会社で雇うことは出来ないか」という打診が来ました。
丁度その時は、長く働いていたスタッフが暫く休みたいと言って来た時でしたので、面接と仕事のトライアルをしましたところ、
能力もあって、とても感じが良い女性だったので 本採用を前提とした見習いからスタートしてもらうことにしました。
その女性をAさんとすると、Aさんがうちで仕事を始めたすぐ直後に紹介者の知人から再び連絡が来て、「Aさんは自分に義理立てして働いているだけで、
実はそちらの会社の仕事がしたかった訳ではない。だから休職中のスタッフが戻ってくることになったというような口実をつけて
解雇してあげてくれないか」と言ってきました。
紹介者によれば、Aさんは精神的に仕事に通うのが辛い時期があったので、今でもストレスを感じる職場は適さないのだそうで、
以前の職場にもかなり迷惑を掛けていたらしく、うちにAさんが務めるのは、うちのためにもAさんのためにもならないとのことでした。
ですがAさんは うちの職場は仕事がし易いとか、仕事が見つかったお陰で気持ちが軽くなった等、私に何度も感謝してくれていて、
私にはそれがウソや口先だけの言い分には聞こえませんでした。
そこでAさんに メンタルの話以外の 紹介者に言われた内容を話して、うちで働くことを本人はどう思っているかを尋ねたところ、
紹介者に義理立てして働いている訳ではないこと、紹介者にはうちを紹介してくれたことをきちんとメールで感謝したので、そのような誤解をされてしまう理由が分からないと
かなり驚いていました。
その時の私とAさんの間では、紹介者には私達がこの話をしたのは内密にしようということになり、紹介者にAさんの仕事ぶりについて聞かれても
私は詳細を語らないようにするということで合意しました。
しかしそれ以来、紹介者から以前よりも頻繁に仕事中に電話が掛かってくるようになり、「Aさん、まだそちらで雇っているの? 大丈夫?
あの人、突然ストレスが爆発するらしいから気を付けてね」といった警告めいたことを言ってきます。
私は紹介者の方が恐ろしくなってきましたが、もし紹介者の言うことが本当だったらという気持ちが無きしもあらずで、そんな心配がストレスになってきました。
紹介者と私は仕事絡みの知り合いで、特に仲が良いという訳ではありませんが、過去に何度か仕事関連の人間関係を紹介してもらったことがあり、私の会社のことは良く知っています。
紹介者はAさんの以前の雇用主と友人同士で、その雇用主に「Aさんの次の職場の心当たりは無いか」と言われて私に紹介してくれたようです。
Aさんと紹介者は、以前の会社のスタッフと1度だけ一緒に飲みに行ったことがある以外は、特に付き合いは無かったようで、
前の会社を解雇された後に 「新しい職場を紹介する」といって数回電話でコンタクトしたそうです。
このことを友達に相談したところ 「Aさんか紹介者のどちらかがサイコバスだから、どちらもに気を付けるように」と言われてしまいました。
実は 私の知り合いが経営する小さな会社が、メンタルの問題を抱えたスタッフのせいで ガタガタなってしまったことがありまして、
こんなご時世ですので 「自分の会社も同じことになってしまったら…」という不安がぬぐい切れません。
Aさんは今のところ良くやってくれていて、このまま頑張ってくれるのであれば 今休んでいるスタッフが戻ったとしても
仕事を続けて貰うために、そろそろ本採用を話し合う時期が来ています。
ですが本採用にしたら紹介者がどう思うだろうか等、いろいろ細かいことが引っかかってしまい、もう少し様子を見るべきかなど、悩んでおります。
秋山さんでしたら、この状況でAさんを雇われますか。その場合、紹介者にはどう対処されますか。何かアドバイスを頂きたいです。
よろしくお願い致します。
- S -
私はSさんに頂いたご質問を読みながら、最初のうちはご紹介者が女性であることを頭に描いていたのですが、
読み終わる段階では男性ではないかという気持ちを強くしました。
もし間違っていたら恐縮ですが、Sさんは最初から最後まで「紹介者」という言葉を使い続けていらして、
「彼」、「彼女」といった言葉が一切で出て来なかっただけでなく、その性別を感じさせる記載もありませんでした。
ひょっとしたら ご紹介者が男女にカテゴライズされないノンバイナリーでいらっしゃる可能性もあるかもしれませんが、匿名のご質問にそこまで配慮される必要は無いように思います。
また女性は、往々にして男性に関する相談事では 表現や言葉を慎重に選ぶ傾向にあります。
ですので、私はSさんのメールに登場する「ご紹介者」が男性ではないかと思った次第です。
ご紹介者が女性の場合は Sさんのお友達がおっしゃるように「サイコパス」というケースもあるかと思いますが、男性の場合でしたら 既婚でも、未婚でも
私の目からは Aさんに並々ならぬ関心を寄せているように見受けられます。 新しい職場を紹介したら、Aさんが自分をメンターのように慕ってくれることを期待していたのに、
お礼のメールだけで終わってしまったので、もしSさんに解雇されたら 自分が相談相手になるふりをして近付けると思っているのかもしれませんし、
そうでなければ もっとAさんと親しくなれそうな新しい職場をみつけて、そちらを紹介したいのかもしれません。
「まさか!」と思われるかもしれませんが、男性でも女性でも一度恋愛感情を抱くと、人間は普通ではやらないことをやってのける生き物で
小細工でも根回しでもして 相手に近付こうとするものです。
ある心理学者は恋愛を「精神錯乱状態」と呼びましたが、恋愛感情を抱けば 既婚、未婚を問わず、何歳になってもその錯乱状態は起こるものです。
いずれにしてもこのケースでは ご紹介者がSさんの職場に口を出したり、探りを入れて来る理由は Aさんですので、
Sさんが余計な心配をする必要は無いように思います。
もしAさんにメンタルの問題があるのかが不安な場合は、以前の雇用主にコンタクトをして当時の勤務状態のリファレンスを貰うことをお薦めします。
これは本採用のプロセスで決して珍しいことではありません。この時に大切なのはAさんに以前の雇用主の連絡先を聞くことで、ご紹介者には尋ねないことです。
ご紹介者に尋ねてしまったら、Aさんがコンタクトをする前に 以前の雇用主に対して何等かの根回しをする可能性があるので、本当の情報が得られない可能性があります。
基本的には 誰の紹介であれ、Aさんは仕事のスタッフですので、仕事の能力や勤務態度で評価、判断をするべきです。
Sさんが Aさんの仕事ぶりに満足しているのであれば、何を考えているか分からないご紹介者の言うことを考慮して その雇用を考え直すのは不適切です。
もしこの先ご紹介者にAさんの雇用について尋ねられた場合には、この類の人は「良い人を紹介して頂いて助かっている」などと感謝してしまうと 後が面倒な場合がありますので、
「ご紹介者に頼まれたので 雇ってみた」とSさんが相手に恩を売るくらいの態度を取りながら、自社の人事にはそれ以上の口出しをさせない姿勢を経営者としてはっきり示すべきです。
ご紹介者がSさんの会社の筆頭インヴェスターでもない限りは、社内人事について何を言われようとSさんが考えたり、悩んだりする必要など無いのです。
もしSさんが 社内のことに口出しをされて「No」が言い難いほど、ご紹介者から 例えば高額ディナーを何度もご馳走になった等の恩恵を受けているのであれば、
これを機会にそれを止めるべきです。
そうした恩恵は「払いたがっているから、払って頂いている」的なメンタリティの人が受けるからこそイーブンな関係でいられます。
必要以上に「借り」の気持ちを抱く真面目な人がそんな恩恵を受けてしまうと、お返しの義務感のせいで余計な世話を焼かされるケースが出てきます。
正直申し上げると、私はメールの文面から Sさんの先入観が若干強いお人柄を感じ取りました。
先入観とは固定概念であり、そうした考えを持つと メールに書いて下さったような
「私の知り合いが経営する小さな会社が、メンタルの問題を抱えたスタッフのせいで ガタガタなってしまったことがありまして、
こんなご時世ですので 自分の会社も同じことになってしまったら…という不安がぬぐい切れません」
というメンタリティをもたらします。
以前からこのコーナーに何度も書いてきましたが、未だ起こっていないことを恐れる必要などありません。
そういう気持ちを抱くことの方が 引き寄せの法則でトラブルをもたらすのです。
Sさんにはもっと様々なことを受け入れるオープンな心を持って頂きたいと思います。
そうすれば問題が起こった時にも解決策をいろいろな方向に求められる機転や柔軟性が養われるのです。
人間が人生で失敗するのは トラブルに見舞われるからではなく その対処法を誤るからです。
何故 対処法を誤るかと言えば、特定の対処法や解決法にこだわり過ぎて、どちらに転んでも失敗するような手立てしか打てなくなるためです。
Sさんの先入観や固定概念は、トラブルや問題を想定して それら防いで守りを固めようという思考とタイアップ状態になっています。
すると どうしても 先を恐れてビクビクする 器の小さい人生、生き方、ビジネスになってしまいがちです。
些細なことで動じず、不安など感じない、本当の強さや幸せを手に入れるためには、
何が起こっても対応できる自分自身を確立する以外に方法はありません。
こればかりは本を何冊読もうと、YouTubeのビデオレクチャーを何本観ようと身につくことはありません。
実際の人生でトラブルや問題に直面し、そこから学んで、乗り越えながら自信と経験を身に着けるしかないのです。
若いうちから自分を強く鍛えれば鍛えるほど、人生の早い段階で 不安や迷い、疑い、嫉妬などを感じることが無い、幸福なメンタリティに辿り着けると私は信じています。
その意味で、事なかれ主義というのは人生の大切な学びのチャンスを逃す生き方だと言えます。
Sさんには、今後不安やストレスを感じた時にはそれが状況によってもたらされているのではなく、それを捉える自分側にあることを認識して頂いて、
自分を強く鍛えることにフォーカスして頂きたいと思います。人間は生きている限り、大小様々な問題に見舞われますし、それは防ぎようがありませんので、
自分を強くするしか問題を軽減、払拭する手段はありません。
人間的な強さの重要な部分を担うのが柔軟さです。柔軟な物ほど壊れ難く、柔軟な身体ほど怪我が少ないのです。
柔軟になるには視野を広く持って、様々な人の考えを受け入れること、周囲と自分に優しくすることから始まります。
私は精神的に強い人ほど、些細な事に惑わされたり、悩まされたりすることなく、常に周囲に優しく、明るく振舞い、
生きること全てが幸福と幸運を呼び込むための連鎖になっていると考えています。
Yoko Akiyama
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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